MACDとは
MACDはどのような指標か
ここでは、人気のテクニカル手法であるMACD(マックディー)について説明していきます。
MACDは、ジェラルド・アペルというテクニカル分析の第一人者が開発したもので、
Moving Average Convergence Divergence(移動平均・収束・かい離トレードィング手法)
の英語の頭文字をとったテクニカル分析指標です。
メタトレーダーで使うときには、オシレーター系に分類されていますが、実際には、Moving Averageの頭文字からもわかるとおり、移動平均線と深い関係を持っており、トレンド系のテクニカル指標ということもできるのです。
その理由については、MACDの計算式を見ていただければよく分かります。
- MACD=短期の指数平滑移動平均線(EMA)-長期の指数平滑移動平均線(EMA)
MACDは、短期のEMAから長期のEMAを引いたものであり、その間隔がどれくらいあるかを表したテクニカル指標です。
EMAというのは上記の指数平滑移動平均のことであり、単純移動平均線が過去の終値の単純平均である一方、MACDのベースとなるEMAは、直近の終値をより高く評価する指標です。
つまり、MACDは移動平均線のゴールデンクロスやデッドクロスの売買シグナルをそれよりも少し早く表すことができる指標なのです。
移動平均線について詳しくお知りになりたい方は、記事:移動平均線によるチャート分析をクリックしてください。
一応、EMAとMACD,シグナルの求め方についても触れておきますが、難しいので、苦手な方はスルーしてください。
- 1日目
- n日間の単純移動平均値=n日間の終値の合計÷n
- 2日目以降
- n日間の指数平滑移動平均=前日の指数平滑移動平均値+2÷(n+1)(当日終値-前日の指数移動平均値)
メタトレーダーのデフォルト値である短期EMA20日、長期EMA40日をMACDとします。
すると、
- 20日指数平滑移動平均値=前日の指数平滑移動平均値+(2÷21)×(当日終値-前日の指数移動平均値)
- 40日指数平滑移動平均値=前日の指数平滑移動平均値+(2÷41)×(当日終値-前日の指数移動平均値)
- 数値としてのMACD=1の値から2の値を引く
- シグナル=3で計算したMACDの一定期間の平均値
個人的には、上記の難しい計算式を丸暗記する必要はなく、ただ単純にMACDというのは
- 短期のEMAから長期のEMAを引いたものであり、その間隔を見る
- 移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスになるタイミングをいち早く知ることができる指標
と理解しておけば十分だと思います。
MACDの使い方
MACD2本のラインとヒストグラム
ここからMACDの使い方について説明します。
MACDは、本来、2本のラインとヒストグラムで表されます。
2本のラインとは、MACD線とシグナルラインです。
これらは、上記の計算式などでも少し触れましたが、難しいので、単純に
- MACD線=短期EMA-長期EMA
- シグナル線=MACDの一定期間の平均値=SMA
- ヒストグラム=MACD=シグナル
と覚えてください。
ここからは、図を交えながら説明します。
MACD線
まず、MACD線。
MACDの設定は、短期EMAを12日、長期EMAを26日とし,チャート上にも同じ設定のEMAを描画しています。
例えば、直近の相場が上昇トレンドだとします。
この場合、短期EMAは、長期EMAの上に位置しています。
つまり,数値で表すとEMAの値が大きいので、短期EMA-長期EMAはプラスの値になる。
逆に、下降トレンドであれば、短期EMAは長期EMAの下にあり、つまりは、数値で表すと短期EMAの値が小さいので、短期EMA-長期EMAはマイナスの値になる。
だから、当たり前といえば当たり前なのですが、
- チャート上のEMAがゴールデンクロスすれば、MACDラインは0ラインを下から上へクロスする
- チャート上のEMAがデッドクロスすれば、MACDラインは0ラインを上から下へクロスする
と定義することができます。
シグナル線
次にシグナル線です。
シグナル線は、MACDの一定期間の平均値をとってチャート上に記入しているのです。
つまり、シグナル線は、MACD線のSMAということができます。
シグナル線を描画することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
例えば、上記MACDに9日間のシグナル線(赤い線)を入れると、次の図ようになります。
青い縦線は、MACD線とシグナル線がクロスしたところを、わかりやすくするために表示しています。
お気づきのことと思いますが、
- MACD線とシグナル線がゴールデンクロスした後にチャート上のEMAがゴールデンクロスする
- MACD線とシグナル線がデッドクロスした後にチャート上のEMAがデッドクロスする
ことがわかると思います。
つまり、MACDは、移動平均線よりも早く売買のタイミングを知らせてくれる、とても優秀なツールなのです。
話が戻りますが、移動平均線の弱点は、その遅効性です。
「過去一定期間の終値を合計して、その日数で割り、価格の動きをなめらかにチャート上に表示する」というのが、移動平均線の本質の一つ、つまり、その遅効性が移動平均線の弱点でもあり、セールスポイントでもあるのです。
よって、移動平均線のシグナルのみに頼って、ゴールデンクロスを待ってエントリーしたら、その後価格が思ったように上がらなかった、なんてこともあるわけです。
そうすると、
移動平均線が出すシグナルよりも、もっと早くトレンドの発生を教えてくれるツールが必要になる=MACDの出番
ということになります。
このような理由から、売買タイミングとして、MACDとシグナル線がクロスした瞬間を狙うという手法が、教科書的に説明されています。
但し、移動平均線よりもトレンドの発生を知らせるシグナルが早く点灯するということは、それだけMACDにはダマシも多いということができます。
特に、明確なトレンドが発生していないもみ合い相場では、MACDを頼りに売買するのは避けた方が無難でしょう。
ヒストグラム
一方で、ヒストグラムというのは、MACDとシグナルの差を計算し、0を表すラインを上下して、トレンドが切り替わるタイミングを教えてくれるツールです。
要するに、先ほど説明した売買シグナルをもっとわかりやすく視覚化したもので、
- MACD線とシグナル線の差がなくなってゴールデンクロス=ヒストグラムが0ラインを下から上に突き抜けてクロス
- MACD線とシグナル線の差がなくなってデッドクロス=ヒストグラムが0ラインを上から下に突き抜けてクロス
して売買タイミングを教えてくれます。
MACD線とシグナル線がクロスしたところと、ヒストグラムが0ラインをクロスするタイミングはまったく同じです。
よって、どれを表示させるかは好みの問題といえるでしょう。
基本的には、MACD線とシグナル線の2本表示で、
MACD線とシグナル線がクロスしたところで売買に備える。
MACD線が0ラインをクロス=EMAのクロスなので、買い増しを検討する。
といった手法がとられると思います。
「備える」と言ったのは、あくまでクロスしたからすぐに売買するのではなく、チャートパターンやライン、波動理論等を組み合わせて売買判断をするという意味です。
また、MACDは、基本的に移動平均線の考え方を根本に持っている指標なので、やはり、移動平均線と同じく
MACD線とシグナル線の方向が揃っているか
MACD線とシグナル線の傾きの度合い
をしっかり判断して売買に取り組む必要があると思います。
MACDはチャートソフトによって表示が異なる
さて、余談ですが、前述のとおり、MACD線、シグナル線、ヒストグラムというのは、それぞれこのような特徴を持っており、機能的に重複する部分があります。
よって、チャートソフトにより、その表示の仕方は様々で混乱することがあると思いますので、一つ例を挙げておきます。
世界中のトレーダーが愛用しているメタトレーダー4(以下MT4とする)では、シグナル線とヒストグラムの2つがデフォルトで表示されるようになっています。
これは、メタトレーダー4に標準搭載されているMACDをデフォルトのまま表示した画像です。
図で、赤い点線がシグナル線、黒い棒グラフがヒストグラムとなります。
しかし、ここで間違えてはいけないのは、
MT4のデフォルトで表示されるヒストグラムは、MACD線そのものを表している
ということです。
ヒストグラムは、本来、MACD線とシグナル線の差を計算して視覚化したものなので、MT4のヒストグラムをそのまま通常のヒストグラムと認識してしまうと、売買判断を誤る可能性があります。
この誤りを防ぐために、MT4に標準搭載のMACDヒストグラムを、本来のMACD線として線状に表示する方法があります。
(別記事で作成次第、リンクを貼る予定です。)
MACDのダイバージェンシ-を利用した効果的なトレード
MACDのもう一つの使い方を説明します。
「ダイバージェンシー」という言葉を聞いたことがありますか。
ダイバージェンシ-は、「逆行現象」とか「逆かい離」と訳されます。
要するに、
- 実際の価格が上向きに推移している(高値更新)のに、MACDは下向きに推移している(高値を更新せず)
- 実際の価格が下向きに推移している(安値更新)のに、MACDは上向きに推移している(高値を更新せず)
といった現象のことです。
わかりやすく図を挿入しておきます。
図でラインを引いたところのトレンドを根っこから観察すると、急上昇した後に、一休止して押しをつけ、その後前の高値を更新してグンと伸びています。
しかし、その伸びは、思ったほどではなく、もみ合いの後に上昇トレンドが終了し、価格は下落の一途をたどります。
その時、MACDはというと、最初は、トレンドと同じように急上昇しますが、一休止の後、前の高値を更新できずに下落しています。
このダイバージェンスに出会った時、投資家が何を考えなければいけないかというと・・・・
何かが起こっている
です。(笑)
決してふざけているわけではないんですね。
実は、巷では、結構というか、頻繁に
ダイバージェンスが起こったら、価格が反発する
と説明されています。
しかし、これは、正確ではありません。
ダイバージェンスが起こったから、必ず価格が反発するかというと、そうではないからです。
ダイバージェンスは絶対ではない。
しかし、相場では確実に何かが起こっていて、ダイバージェンスは、我々投資家に対して
- このまま、ポジションを持っていたら、危ないかもしれないよ。
- 新規にエントリーするのも危ないから、様子を見ようね。
と警告を発してくれているのです。
つまり、
- ポジションを持っている人は、そのポジションを決済する準備をはじめる。
- 新規にエントリーするのを控える。
と同時に、
- 相場の反転が確認できた段階で、エントリーの準備をする。
- 相場が継続することを確認した時点で、エントリーの準備をする。
という対策が求められます。
上の図は、一つのトレードの例です。
ダイバージェンスを確認して、「相場に何かが起きるな」と感じたら、それまでのポジションを整理して次のエントリーに備えましょう。
本当は、3波目に切り上げラインを引いて下抜けからエントリーでもいいんですが、今回は視覚的にわかりやすいポイントで説明します。
しばらく待っていると、3つの山(トリプルトップ)ができました。
もちろんこの後は、ネックラインを引いて、下抜けしたのを確認したら、下の時間足に切り替え、リテストを待って次の足からエントリーします。
決済は、思い切って前の波の下限までさします。
このトレードは、
- ダイバージェンスの確認→様子を見る
- 案の定、トレンド転換の予兆であるトリプルトップの完成→エントリーの準備
- ネックラインの下抜け→リテストを待つ
- リテストを確認→時間足を落として次の足からエントリー
という一連の流れです。
もちろん、後からならいくらでも理屈づけはできますが、一つの例として参考にしてください。
このように、ダイバージェンスは、トレーダーに様々な情報を与えてくれる頼りになる存在です。
慣れるまでは中々意識がいかず、見逃してしまいがちですが、今回の記事を参考に、少しでも利益が出ることを祈っています。
今回は、MACDを使ったことがない方や、使ったけどうまく使えなかった方のために、MACDの成り立ちや性質、使い方やダイバージェンスについて説明しました。
今後のトレードの参考になれば幸いです。
それでは、またお会いしましょう。